linkerは「人と人」「人と情報」「人と物」をつなぐデザインユニットです。

ロゴデザインに役に立つかもしれない「紋章学」のこと

100414_00.jpg

こんにちは、taku-workです。
今回は前振りなしに、紋章学のおはなし。
紋章学とは主に中世ヨーローッパ貴族の世界で使われてきた紋章についての学問で、どのような規則でどのように成り立っているのかを体系的に学ぶことができます。ロゴデザインをするときの役に立つかもしれない知識として学んでみるのはどうでしょう。

紋章とは

紋章とは、個人または団体を表すシンボルマークで、家柄を表す厳密な規則によって作成されています。
また継承性のあるものを紋章とよび、それ以外のものはemblemと呼ばれ区別されるそうです。

紋章のはじまり

西洋の紋章のはじまりは貴族が携行していた「楯」に個人を表すシンボルを記していたところからという説が一般的だそうです。
中世の貴族は騎士であり、戦いの中で敵に対し自分は何者をであるかを示し、知らせるための目印として、常に携行する楯にマークを記していたとのこと。後に楯の形ごと紋章として使われたのがはじまりだそうです。
日本の紋章である家紋には同然ながら楯は使われていません。

紋章の継承

西洋の紋章は継承制度がしっかりと守られています。また、個人を表す記号であるため、親子であっても別の紋章として扱われています。
また、婚姻や相続によって紋章は双方の紋章が組み合わさります。
紋章中央の楯の部分の中にいくつもの図柄が入っているのはそのためです。
組み合わせ方も様々でその組み合わさり方もきちんと区別されています。

組み合わせの仕組みや名称は「紋章学辞典」や「西洋の紋章とデザイン」に詳しくかかれているのでおすすめです。

「紋章学辞典」は完全に辞書なので、後述の読み物部分の多い「西洋の紋章とデザイン」とあわせて読むのが良いです。

紋章のデザイン

西洋の紋章は本来は楯とその中身だけであったものが時代とともにいろいろなアクセサリー(クレストと呼ばれる紋章上部の図案や、サポーターと呼ばれる楯の横にいる人・動物などなど)が追加されています。

楯だけのものを小紋章(Coat of ArmsまたはSmall arms)と呼び、アクセサリーが追加されているものは大紋章(Achievementまたはgreat arms)と呼ばれます。それぞれのアクセサリーの種類によって階級や家柄を示しているそうです。

紋章に描かれるチャージ(charges)とよばれる具象図形も様々あります。
有名なところではライオン、鷲、馬、王冠などがあって、ライオンひとつとっても首の向きや形が厳密に分類整理されています。
チャージには面白い図案がたくさんあるので面白いです。

「西洋の紋章とデザイン」に少し古い事例ですが、現代の紋章やエンブレムの解説がいくつかあります。
ポルシェやアルファロメオのエンブレムや新宿中村屋のロゴマークに対しての紋章学的な解説は面白いです。

東西の紋章

継承性をもつ本来の意味での紋章はヨーロッパと日本にしか存在しないそうです。
また、東西の紋章のデザインにおいても多くの共通点があります。
鳥などの図案を見ると、その首の向きの多くが東西問わず向かって左をむいていることなど、似た図案がおおいことに驚かされます。

共通点の多い東西の紋章ですが、決定的に違うのは、西洋では個人を表してる紋章を代々組み合わせて次の紋章としていたこと対して、日本では「家」単位で同じ紋章を継承していることです。文化背景の違いが出ていて面白い。

東西の紋章については「ヨーロッパの紋章・日本の紋章」がおすすめです。

ということで

昔から個人や団体を表すマークとして紋章や家紋といった文化があって、それを踏まえながら今現在のロゴマークやエンブレムなどをみてみると、昔との共通点や違いがわかったり、記号を使ってのコミュニケーションの根本的なことがわかって面白いですね。温故知新というわけです。

あの貴族の紋章が赤だからうちでは使えないとか、この紋章のこの部分は変えてはいけないとか、そんなことが昔もあったことを思うと、現在のCIなどのレギュレーションと同じでなんとも面白いものです。