デザイナーにも、そうでない人にもオススメの本「フォントのふしぎ」
ども、火曜/金曜担当の@cremaです。今日は、かなり前に発売された本のレビューを書いてみます。
その本のタイトルは、「フォントのふしぎ」。ドイツのフォントメーカー「ライノタイプ社」で、タイプディレクターとして活躍する高名な日本人・小林章さんの著作です。
そもそも、2012年2月4日に開催された『CSS Nite LP, Disk 21「タイポグラフィ、組版、Web Fonts」 - Togetter』の折に、主催者の鷹野さんからオススメ本として挙げられていた本書。先日書店で見かけたので、購入してみた次第です。
元々の書籍のカバーはこんな感じ。「フォント(font)」のfと「ふしぎ(fushigi)」のfを合字にした美しいタイポグラフィがあしらわれています。
そこに、オビというにはあまりにも面積の広い紙がかけられており、内容のものすごいアピールぶりです。
装丁家にとってはもしかすると残念な(?)事態なのかもしれないのですが、私個人的には、編集者さんの「デザイナー以外の普通の人にも、この本の面白さを伝えたい!」という熱意がこういうオビにさせたような気がしてなりません。
ということでこの本は、小林さんを知らずに「このオビが気になって」手に取るような読者層にも十分届くような、とても親しみの持てる口語体で執筆されています。例えばこんな感じ。
いっぽうで、1とアイがまったく同じようなデザインのフォントもある(183ページ)。別にどっちがイイとか悪いとかじゃないんで。
著者がヨーロッパで撮影したフォントのスナップ写真をふんだんに掲載しつつ、こんなお兄さんが横で解説してくれているような文体で解説が進んでいきます。まるで、お話の上手な先生のわくわくする授業を受けているような気分になること、間違いなしです。
小林章さんは、2010年に7月にアップルストア銀座でフォントのセミナーを開催されたこともあるそうです。本書は「そのセミナーはこんな内容だったのでは?」と連想させるような、雰囲気と言えば伝わるでしょうか。
掲載写真に写っているフォントは、きちんとフォント名とメーカーが脇に添えられています。例えなこんな感じ。
ですので、単なる書体見本帳からは想像しにくい「実際に生活の中で使われているフォント」の姿を、生々しく一覧することができるのです。自分を取り巻く世界がいかに文字で溢れているか、そしてそこにどのような眼差しを向けていくかの、良い練習になる気がします。自分も生活の中でフォントのスナップを撮り、コレクションしてみようかなという気分になりました(日本だと、悪い例も多いのかな)。
最後に、私が気になった節の見出しを挙げてみますね。
- マイケル・ジャクソン「THIS IS IT」の王道感
- ニールズヤード・レメディーズの使っているフォントは
- ルーブル美術館が使っているフォント
- フランスっぽい筆記体
- 消えつつあるドイツ文字
- 絶滅寸前のズュッタリン筆記体
- フォントの選び方を間違えると命取りか?
- Times RomanとTimes New Romanの違い
- Aの右線が太いワケ
- Uって昔はなかった?
どうでしょう? 読んでみたくなりません?
気軽に読めるのにとても勉強になる、かなりの好著だと思いますよ!
美術出版社
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