linkerは「人と人」「人と情報」「人と物」をつなぐデザインユニットです。

Webデザイナー的に「みんビズ」とのつきあい方を考えてみた。

火曜/金曜担当の@cremaです。

今週前半に話題となったのが、GoogleとKDDIが共同で始めた新サービス「みんなのビジネスオンライン」。一言でいうと、中小企業および個人事業主をターゲットとした「簡単ホームページ作成サービス」ですね。

もともとKDDIウェブコミュニケーションズさんが運営していた無料ホームページ作成サービス「Jimdo」がベースになっており、公開するWebページデザインのまま直感的に編集できるUIが特徴的。

それが「みんなのビジネスオンライン」という新しい枠組みを得まして、独自ドメインの取得費用を含めて「初年度無料(※1)」というウリが、それなりに大きなインパクトを与えているようです(※1 2年目以降はドメインによって異なる月額料金が発生)。

私も個人事業主ということで試しにアカウントをとってみましたが、サービスへの申込みは非常に簡単でした。アカウント取得に関してのレポートは、下記のブログ記事がとても詳しかったので、ご覧になってみてください。

みんなのビジネスオンラインでホームページ制作会社の仕事が減る?「みんビズ」サイト作成手順レビュー

このサービスは、Webデザイナーの職を奪うのか?

さて、このサービスの発表時に私の観測範囲内でよく見られた発言が、「これで(小規模な案件をやっている)Webデザイナーの仕事が無くなるんじゃないか」という趣旨のものでした。

第一印象的には、

  • 独自ドメインが使えて、
  • そのドメインのメールアドレスが取得でき、
  • サーバを別途借りる必要も無く、
  • テンプレートも数十種類準備されていて、
  • HTMLを書かなくても更新ができて、
  • アクセス解析がついていて、
  • ショッピングカートも設置できる

というようなサービスが、初年度無料(翌年も月額2000円以内ぐらい)で使えたら、小規模案件は全部そっちに流れてしまうと思われる方もいらっしゃるであろうなぁと思いました。

しかも、これだけWeb以外の広告も露出し、メール、動画、写真、アクセス解析、SNSなんでも手中に収めている一流企業「Google」のブランド感も加わるので、街の中小企業や商店の方々には魅力が大きいであろうと。

しかし、実はわたし個人的に考えれば考えるほど、これであまりWebデザイナーの仕事が無くなって困る!という気がしなくなってきました。

# ここから先に書くことは、あくまで、フリーのWebデザイナーを8年やっている個人の妄想に近い仮説ですので、「これが正解だ!」と申し上げるつもりは毛頭ありません>< 他のご意見がありましたら、ぜひお聞かせくださいませ。

仮説その1

「無料」ということに非常に魅力を感じる中小企業(や個人事業主)の場合、有料でサイトを作るとしても予算感は100,000円台から〜300,000円台程度なのではないかと推測されます。これは、私がこの規模の方から「ホームページ作りたいんだけど」と相談される場合の最多価格帯です。(すごく予算がある場合でも500,000円ぐらいなイメージでしょうか。地元で1〜2人で商売している美容院や開業医やお花屋さんや、そんな規模を思い描いてみてください)

そのような規模の案件をお引き受けしたとしたら、3人日から最大でも10人日ぐらいで、さくさくっと企画を立ててデザインしてコーディングして納品、ぐらいで動かないと、赤字になってしまいます。そういう場合は、非常に低コストかつ便利な機能が沢山ついたCMSとして「Jimdo」を使い、低予算の中でできる範囲の制作をして差し上げる案件として成立するのではないかという仮説を持ちました。これがひとつめのパターンです。

そして、そのような小規模店主の方の場合、ご本人がPC作業に慣れているケースは、あまり多くなかったりします(あくまで、私がご相談を受ける場合ですよ)。CMSを設置して差し上げたとしたら、丁寧に更新方法をご説明することが必要だったりしますし、画像処理ソフトやフォントなどをお持ちの場合も少ないので、ご自分でヘッダ画像やバナーなどを作成できる感じではなかったりします。

上述したようなクライアントさんに、「みんなのビジネスオンライン」というものがあるので、使ってみてくださいね!無料でできますよ!と丸投げしておすすめしたとしても、今までの経験上、あまりお一人でさくさく更新できるイメージがないのです、私。おそらく、「Jimdo」の更新方法を横から教えて差し上げるか、ヘッダ画像やバナーなどを作って差し上げることになる気がします。

もしくは下手をすると、紙などで指示をいただいてこちらが作成することになるかもしれません。実際、MTやWPでサイトを作って差し上げても、最終的には「よくわかんないから黒野さん更新して」となるケースも、一定の割合であるのです。これって、珍しいのでしょうか(ということを実は知りたい)。

ですので、結局、クライアントさんができない作業を、ご予算の範囲内でお手伝いする案件として、残るのではないかいう感触があります。

# 違ったら本当に申し訳ないのですが、既に事例として用意されているサイトって、ちょっときれいなものは多分プロのデザイナーさんがお手伝いしているとしか思えないのですよね。たとえばこれの左側のバナーとか。

仮説2

では、「みんなのビジネスオンライン」を使って、誰の手も借りずにご自分ひとりでWebサイトを完成させられる人はどんな人か、イメージを考えてみました。

最低限、WordやExcelが使えるビジネスパーソンで、ブログやmixiなどの更新を通じて、HTMLは書かないまでも、ブラウザでのテキスト入力や、簡単な写真の加工はできるぐらいのスキルがある方。「インターネットと言えば携帯」という感じではなく、PCでもWebサイトを閲覧することに慣れている方。

そういう方が起業するか副業でWebサイトを作ろうと思う場合は、「Jimdo」を使ってこつこつご自分で仕上げられるのだろうなぁ、と、私は考えます。

そして、そういう方が、「Jimdo」ではできないようなことをWebサイトでやりたくなった場合、ご自分でものすごく勉強してMTやWPでサイトを作る方向に行くか、プロにそれなりにお金を払って制作してもらうかというほうに発展するか、どちらかなのかなぁ、と。

前者の場合は、私がやっているようなWebサイト制作の技術的講座の生徒さんになっていただける可能性がありますし、後者でしたら制作をご依頼いただける可能性があります。

ということで、こちらも個人的には、「Webデザイナー殺しの焼き畑農業」というイメージを持たないのですが、いかがでしょうか。

ちょっと楽観的すぎるのかもしれませんが、そもそも最近、そういう小規模案件よりもゼロからオーダーメイドの中規模以上の案件が多いため、まぁあまり競合しないかなぁと思ってしまったりしていまして。

さぁ、あなたはどう思われますか?