linkerは「人と人」「人と情報」「人と物」をつなぐデザインユニットです。

「日本のWebサイトと海外のWebサイトの根本的な違い」を読んだ。

火曜/金曜担当の@cremaです。

Seattle Colorという海外ソーシャルメディアや留学情報中心のブログの「日本のWebサイトと海外のWebサイトの根本的な違い 」という記事が面白かったので、ご紹介します。

著者のmomoco-fさんは「Cross cultural Communication(異文化コミュニケーション)」について学んでいるとのこと。授業で見つけた論文で、グローバル企業の代表であるマクドナルドのWebサイトを比較して、Webサイト制作における文化の影響を論じたものを見つけたそうなのですが......。

最初の部分をちょっと引用してみましょう。

この議論は、国内のもの、あるいは海外のものをそのまま翻訳して移行しても、受け入れられにくい理由の説明になります。翻訳された海外サイトのWebサイトを見たときに生じる違和感は、実は翻訳された言葉の問題ではなく、コミュニケーションについての考え方の違いにあるのです。

日本のWebサイトと海外のWebサイトの根本的な違い - Seattle Color

ということで、コミュニケーションについての考え方は、「Low-Context(LC)カルチャー」と、「High-Context(HC)カルチャー」によって異なるという説明がされていきます。

Low-Contextカルチャー

言葉自体がそのまま受け止められることが多いです。

コミュニケーションは、直接的、正確、大げさ、開放的であり、感情、本音に基づきます。

High-Contextカルチャー

言葉以外のものに、本意が含まれることが多いです。例えば、動作、沈黙、話し方、時間、場所などによって言葉の意味が変わります。話者との関係性が濃いほど、Contextが重要です。

コミュニケーションは、間接的、曖昧、調和、控えめになります。

日本のWebサイトと海外のWebサイトの根本的な違い - Seattle Color

「Low-Context(LC)カルチャー」「High-Context(HC)カルチャー」という言葉、ご存知でしたか? 恥ずかしながら私は知りませんでした(もちろん文化によってコミュニケーションのスタイルが異なるということは、なんとなく分かっていましたが)。

Contextというのは「文脈」。

ある「言葉」や「行動」を、前後関係/年齢/性別/相手との関係性などの「文脈」とどのくらい関連付けてコミュニケートするか。それが文化によって異なるのですね。「高コンテキスト文化」「低コンテキスト文化」という言い方もあるそうです。

この言葉を知らなかった私は、いくつかのサイトを見て回ってみました。異文化コミュニケーションを学ぶ上では、重要な言葉のようですね。

「高コンテキスト文化」から「低コンテキスト文化」まで、高コンテキスト順に(つまり、高コンテキスト→低コンテキストという順番で)各国を並べると、以下のようになる。

1. 日本
2. 韓国
3. サウジアラビア
4. 中国
5. インドネシア
6. タイ
7. フランス
8. イタリア
9. イギリス
10. チェコ
11. アメリカ
12. オランダ
13. ドイツ
14. スイス

hirax.net::コミュニケーションにおける「高コンテキスト文化」と「低コンテキスト文化」

他のページでも幾つか似たリストを見かけましたが、日本は世界でもダントツで「高コンテキスト」文化な国なのだそうです。日本で生活していると「空気を読む」ことを日常的に強いられますが、それが「高コンテキスト」ということなのかもしれませんね。全般的に、アジアや中東が「高コンテキスト」、ヨーロッパやアメリカ「低コンテキスト」な文化であるようです。

同じページにこういう文章も見つけました。

 比較として、「言葉」を重要視するのが、低コンテキスト文化であるから、低コンテキスト文化では"説明責任"が重視される。すなわち、コミュニケーションでは「話し手(書き手)/聞き手(読み手)」のうち、話し手(書き手)の責任が大きい。その逆に、状況(文脈)の中で「コミュニケーション・理解」が行われる高コンテキスト文化では、聞き手(読み手)が責任を負う。この違いは、とても大きく、とても重要だ。

hirax.net::コミュニケーションにおける「高コンテキスト文化」と「低コンテキスト文化」

この言葉には、はっとさせられました。日本で生まれ育ち日本だけで仕事をしていて、グローバルWebサイトの作成にもあまり関わることの無い私は、無意識のうちに「聞き手(読み手)が責任を負う」と考えて、デザインしてしまっているのではないかと。

Twitterで「日本のWebサイトと海外のWebサイトの根本的な違い」の記事を話題にしていましたら、@trico_lourさんがこんなことをおっしゃっていました。

@crema ただ、ローコンテキストの国のようなウェブサイトのほうが、ハイコンテキストの国の人にだってわかりやすいはずだ、と僕は信じているんですよね。なかなか会社ではそういったデザインをやらせてもらえず、ストレスです。

http://twitter.com/trico_lour/status/14892706625

日常的に「高コンテキスト」「低コンテキスト」を意識しながらお仕事をしている@trico_lourさんは、素晴らしいですね。

日本のWebサイトと海外のWebサイトの根本的な違い - Seattle Color」の記事に戻りますが、世界各国のマクドナルドのWebサイトを比較してみると、「アニメーション」「画像の選択」「トランスペアレンシー(ユーザーが必要な情報にたどり着くまでの経路、わかりやすさ)」「Webサイトナビゲーション」などに違いが見られるそうです。

Webデザインの考察

* HCは画像や動画を使った非言語コミュニケーションが多い。
* 画像の選択において、集産主義か個人主義かで傾向が異なる。
* 力関係の強さ、組織のフラットさは、Webサイト設計の階層構造においても影響している。
* 時間間隔は多様であるが、サイトのナビゲーションにあらわれている。ユーザの忍耐力や情報を進んで探してくれる意思があるかどうかが、デザインに影響している。
* メッセージスピードは、サイトのトランスペアレンシー度に違いが表れている。日本のWebサイトでは、関係性に重視をおくためにスピードが遅くなっている。

日本のWebサイトと海外のWebサイトの根本的な違い - Seattle Color

いかがでしょう? この考察を読んでみると、自分のデザインの仕事において無意識のうちに「高コンテキスト文化」専用のデザインをしていたかもしれないと、つらつら考えてしまいます。「分かりやすく」「伝わりやすく」とは考えていますが、それはあくまでも「日本文化の中」限定なのかもしれないと......。「低コンテキスト文化」の事情も、もう一度学習しなければ!

引用させていただいたhirax.netさんの記事によると、以下の二冊の書籍が「異文化コミュニケーション」について参考になるようなので、読んでみて自分の「無自覚」を反省してみよう思います。

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