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書籍「Webデザイン受発注のセオリー デザインコントロールが身につく本」を読んでみた。

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こんにちは、taku-workです。
先日、60歳手前の知り合いに、その人が20歳の頃あたりまえだった人付き合いについて聞きました。
給料日前の近所の定食屋のやさしさとか。

そんなわけで、今回は書籍「Webデザイン受発注のセオリー デザインコントロールが身につく本」のおはなし。
デザイナーに発注するときに気になるあれこれがまとまっていてオススメです。


"Webデザイン受発注のセオリー デザインコントロールが身につく本" (片山 良平)

今回読んで気になったところを幾つかご紹介。

コラム:役職名でなくスキルセットで見る

役職名は各社様々。認識に誤差がある役職名ではなく、スキルセットを洗い出してそれを埋めるように人材をアサインするとのこと。

確かに。必要なはずの作業について出来る人がいないなんてことが起きないようにしたいところです。
実際小さい案件ではグラフィックに特化したデザイナーがコピーライティングもやることになんて話も聞きますしね。

Capter1 Section3 プロジェクトの目的を明らかにするビジョンステートメント

我々はこれから何をやろうとしているのか?
我々はなぜこれをやろうとしているのか?
この努力が成功したかは、どうしたらわかるのか?

この3つの切り口でプロジェクトの目的を明確化し、共有しようとのこと。

中小企業や個人商店などの案件の場合、お客様側ではこれが明確になっていない場合が多いかと思います。
ヒアリングの時に気にする必要がありますね。

コラム:社長の奥さんが最終決定者

これもよく聞く話で、決定権が知らないところにあってひっくり返るというもの。
はじめにステークスホルダーを洗い出しておくことも必要ですね。
ただ、制作側の立場にいると自分には制御できない部分も多いので、自分がコントロールできる部分(制作工程の柔軟さなど)にフォーカスしておくと気持ち的にも楽ですね。

Capter2 Section1 発注者/制作者の依頼コミュニケーション

よくあるコミュニケーションギャップを例にあげています。
プロジェクトの経緯やスコープの過大認識などなどよく聞く話ですね。

―こうした食い違いは、それぞれ立場による業務範囲の認識の違いが原因である。
経験を積むことでそれそれの認識のズレを緩和することが可能だが、そのためにはお互いに立場を開示しつつ、歩み寄ることが重要である。

これは全くそのとおりだとおもいました。立場の違いがあると見えないことも多いですね。
経験でカバーするのも良いですが、ヒューマンエラーをなくすべく仕組み化できるとさらに良さそうだなと思います。

Capter2 Section11 3案つくる意味

ケーススタディーとして不用意な3案発注の失敗例をあげています。
発注側はデザインを複数案希望することが多いです。 その場合の用意について書かれています。
コンセプトからの3案が欲しいのか、それとも色違いのバリエーションが欲しいのか、発注にあたっては相互確認が必要ですね。

Capter3 Section1 クリエイティブコンセプトの作成

サイトの目指す目標を示し、共有するクリエイティブコンセプトについて書かれています。
ムードボードや訴求ワードなどを使って具体化していくプロセスは大切ですね。

Capter3 Section2 ビジュアルコンセプトの作成

前節のクリエイティブコンセプトをもとにビジュアルコンセプトの構成要素などが書かれています。
ビジュアルコンセプトの要素として

ビジュアルコンセプト
キーカラー
イメージのポジショニングマップ
デザインラフ
フォント、写真やイラストの方向性

が挙げられています。
小規模案件で時間がないときにはなかなか大変な作業なのですが、後々になってクリエイティブにぶれが生じないためにもやっておくと良い項目ばかりです。

Capter3 Section4 アートディレクションの必要性

発注者とデザイナーの間で翻訳者として大切なスキルセットであるアートディレクションについて書かれています。
アートディレクターを専任でアサインするかという話に限らず、そのスキルセットを誰が担当するかを明確にしておこうということです。

たとえば発注側から「そこは赤に」してほしいと要望がきた場合などなど。
ただ赤くするよう支持するのか、それとももとにある問題をきちんと把握して発注側の本意を汲み取れるか。
そのあたりの調整役としてアートディレクターはとても必要ですね。

Capter3 Section10 AD不在時の体制

ケーススタディーとして食品メーカーのインドカレー製品のブランドのサイトのアートディレクションの失敗例をあげています。
ポップということばについて発注側とデザイナーの認識の違いと、修正指示による間違ったディレクションを見ることができます。

認識の違いにはムードボードなどでイメージを共有することも有効ですね。
そして目先の対処にしかならない具体的な修正指示は上手くいかないことも多いです。
先ほどの「そこは赤に」が意味する問題点は「そこを目立たせたい」なので、デザイナーには「そこを目立たせて欲しい」と支持したほうが全体観を損なわずに修正があがることが多いです。
全体観や色彩設計を無視して赤にしてくれと譲らないような修正指示はデザイナーにはなかなか苦い問題です。

ということで、

デザインを発注する際のポイントがケーススタディーとわかりやすい図とともに紹介されていてとてもオススメの一冊です。
複数人が受発注で関係してくる中規模以上の案件にはとても参考になります。
また受注する側のデザイナーも発注側のことを知るきっかけにもなるのではないでしょうか。